So-net無料ブログ作成

悲愴覚え書き(4)~ヨーゼフ・クリップスの場合 [音楽鑑賞]

 この春、スイスの名門、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団がディヴィッド・ジンマンに率いられて来日しますね。ピリオド奏法を徹底させたベートーヴェンの交響曲全集で一躍世界的な旋風を巻き起こしたこのコンビ、伝統をかなぐり捨てた名門オケとのキャッチ・コピーも時折見かけます。

 もう今から半世紀も前の録音で、ウィーンの名指揮者ヨーゼフ・クリップスがこのチューリッヒ・トーンハレを振って、ドヴォルジャークの「新世界から」とチャイコフスキーの「悲愴」をコンサート・ホールレーベルに録音しています。

 「新世界から」はまろやかな柔らかい音楽づくりで、テンポが速く颯爽としていてスタイリッシュです。ウィーン風の香りをオーケストラ相手に振りまいた演奏と言ってよいのではないでしょうか。

 クリップスのチャイコフスキーといえば、デッカが録ったウィーン・フィルとの「5番」が名盤として知られています。第2楽章のホルンソロがまさにウィーン・フィルの音で奏でられています。で、「悲愴」はどうなのか。

 かなりこの曲の荒々しい悲劇的な面にスポットライトを当てた演奏、といえるのではないでしょうか。第3楽章の勢いと、第4楽章を支配する諦念の対比を聴き逃すのも難しい。

 テンポは「新世界から」同様、速めです。しかし、楽句の終りにラレンタンドのついてる箇所でのブレーキはかなりのもので、そのほかのアゴーギグもかなり明確にギヤチェンジしています。また、弦が十六分音符で上下する動きも厳しく入ってきて荒々しくしかしきっちりとした姿で弾かせています。整然として荒々しいというのは矛盾するいい方のようですが、こういう相反する要素を同時に音として実現するところが、この演奏を名演奏とよびたくなる根拠でもあります。

 また、この演奏(コンサートホール盤のCD;CHS161)ではクラリネットの低音など管楽器のソロの音も明確に録られていて、この名門オケのレベルの高さが味わえるのも鑑賞の楽しみです。低弦の合奏能力の高さもすぐ耳につくことでしょう。

 クリップスの評価はジョン・カルショー(デッカの伝説的名プロデューサー)の酷評「ウィンナ・ワルツの指揮者」というのが尾を曳いて、個性の弱いウィーン風の優美な指揮者と把握している人が多いのではないでしょうか。どっこい「悲愴」ではちがう風貌を見せていますよ。でも、この演奏、現在入手しやすい音源なのでしょうか?でないとすると鑑賞者はだいぶ損をしていると言わざるをえません。
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

 にくにく

ケリー先生
お久しぶりです。「悲愴」といえば、ユーチューブでスヴェートラノフの悲愴がおもしろかったです。5分55秒くらいから指揮をやめちゃってます。
https://www.youtube.com/watch?v=95n3AkFxlyg
です。
楽譜台に置いてある扇風機も鑑賞できます。
by にくにく (2014-04-06 01:49) 

ケリー・ジョーソン・ベーム

にくにく先生

コメントありがとうございます。スヴェトラノフ全盛期ソビエト国立交響楽団
との荒々しいソ連重戦車隊の進軍ですね。管楽器の鋭さが特徴的です。この演奏のテンポでは私は弾けません(汗;)指揮をやめているのはこの曲がインテンポで進行するからですが、指揮者が右手をすっと前に出して指揮を再開したときのオーケストラのなめらかな響きに魅了されますね。

 スヴェトラノフは最晩年にN響に客演したときに聴きましたが洗練された演奏でした。手持ちのグラズノフの「四季」(フィルハーモニアorch)でもそう。ソ連ではチャイコーフスキイの音楽が民族的英雄として演奏されるべきとされていたのでは?と、あの国の困難だった時代を思ったりしました。
by ケリー・ジョーソン・ベーム (2014-04-06 15:26) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。